被曝研究、日本も参加を チェルノブイリ調査の博士

(7/28 14:29 時事通信配信)

1986年に起きたチェルノブイリ原発事故で、住民の内部被曝を調査したベラルーシの病理解剖学者
ユーリ・バンダジェフスキー博士(56)が7月に来日し、時事通信社の取材に応じた。博士は同原発
のあるウクライナを拠点に、放射性物質に汚染された土地で健康を維持しながら生活するにはどう
すればいいか、新たな研究を進めている。博士は「東京電力福島第1原発事故で苦しむ日本の研究者
らは、ぜひこの研究に参加して成果を役立ててほしい」と呼び掛けた。

博士はチェルノブイリ事故で深刻な影響を受けたベラルーシ・ゴメリで、死亡した住民を病理解剖し、
放射性セシウム137が心臓疾患に及ぼす影響などを突き止めたことで知られる。新たな研究は欧州連合
EU)から約300万ユーロの寄付を受け、フランスやドイツなどの医師や研究者らが参加。チェルノ
ブイリから南に約50キロのウクライナイワンコフ地区で7000人の子どもを含む住民の健康調査と、
食品の放射性物質濃度の測定などを実施する。博士は「内部被曝しないための施策を進め、住民の健康
を守りたい」と意気込む。

福島原発事故後の日本の現状について、博士は「(政府や東電から)重要な情報が公表されていない」
と批判。福島県をはじめ、東京を含む東北・関東地方を中心に広範に放射性物質が飛散したと指摘し、
「福島以外でも住民の健康調査を徹底し、内部被曝を避けるため食品のモニタリング検査をさらに強化
すべきだ」と強調した。

福島県の県民健康管理調査では、事故当時18歳以下の子ども12人が甲状腺癌と診断されたが、県の検討
委員会は事故との関連を否定している。博士は「日本の医師は原発事故との関係を否定するのではなく、
誠実に対応すべきだ」と述べ、「チェルノブイリよりペースが非常に早く、深刻な事態だ」との認識を
示した。