EM菌と称されるものについて(放射性物質の体内からの排出)

体内に摂取した放射性物質の排出には、「EM菌」なるものが有効という説があります。

しかし、「EM菌」という名称の菌は存在せず、「EM」という概念は存在します。

「EM」とは、

「1982年に琉球大学農学部教授比嘉照夫が、農業分野での土壌改良用として開発した微生物資材の名称。
乳酸菌、酵母光合成細菌主体とする微生物の共生体」

であり、もともとは「農業分野での土壌改良用」を想定しています。
しかしながら、2008年3月、EMなどの微生物資材について「高濃度の有機物が含まれる微生物資材を河川や
湖沼に投入すれば汚濁源となる」との見解を福島県が出しています(直接河川や湖沼に投入せずとも、例え
ば河川敷に散布したEMが降雨と共に流入する可能性はあります)。

そして、「EM」はあくまで比嘉氏の開発したものに限定され、一般の乳酸菌や酵母菌などを指すものではありません。

また、筆者が読了した「チェルノブイリ原発事故 ベラルーシ政府報告書」にも、EMの有効性は(対象が土壌であれ
人体であれ)出てきていません。そのような文献も、筆者が調べた限りなさそうです。

現在のところ、放射性物質の排出効果が明確であるのは、放射性セシウムに対するカリウムです。これを書くと「カリウム
1g当り約32.5ベクレル内部被曝するではないか」との反論をよく耳にしますが、カリウムによる内部被曝は、原発事故が
あってもなくても一定である上、カリウムは人体にとって必須元素であるので不足するとカリウム欠乏症になること、また
余剰なカリウム放射性セシウムと異なり、人体に沈着せず速やかに排出されること、が反証として挙げられます。

ストロンチウム90については、摂取しないよう心がける(魚・肉類の骨は避ける、ストロンチウム90は乳清に多いため、牛
乳ではなくチーズやバターを摂取する)のが一番の対策です。その次に、ストロンチウム90はカルシウムと体内での挙動が
似ているので、汚染されていないカルシウムを摂取して予防すること(放射性ヨウ素甲状腺への取り込みに対する、
予防としての非放射性ヨウ素の十分な摂取と体内システム上似ています)でしょう。

そして、ここからは筆者の個人的な考えになりますが、排出云々を気にする前に、内部被曝の程度を測定すべき、と思います。
体内における放射性セシウムの量が非常に多ければ、プルシアンブルー(フェロシアン化合物)が排出に有効ですが、胃腸に
おいて副作用があります。過重な量ではない、という場合は、前述したようにカリウム、食物繊維(お通じが良くなります)などで
排出を促すことで十分です(要するに栄養バランスの取れた、汚染されていない食材を使用した食事で十分、ということです)。