電磁石の故障が原因か 被曝6人に

*陽子線・・放射線の一種で、水素の原子核である陽子が数多く加速されて束になり流れる。通常の
 光子線より線量の集中性に優れる。

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(5/26 7:13 毎日新聞配信)

茨城県東海村加速器実験施設「J-PARC(ジェイパーク)」で起きた放射能漏れ事故は、加速
した陽子の流れを制御する電磁石の電源トラブルが原因である可能性が高いことが分かった。
このことで、実験材料の金から想定以上の放射性物質が発生したとみられる。運営主体の一つの
高エネルギー加速器研究機構の理事が取材に明らかにした。日本原子力研究開発機構によると、
25日になって事故でさらに2人が被曝していたことが判明し、被曝者は計6人となった。2人は
高エネ研の45歳の職員(被曝量は1.0ミリシーベルト)と23歳の大学院生(同1.4ミリシーベルト)。

J-PARCは地下の三つの加速器をつなぎ、陽子を光速の最大99.98%にまで加速する。事故は円形
加速器(1周約1600メートル)につながる「ハドロン実験施設」で23日に起きた。

高エネ研の峠暢一(とうげ・のぶかず)理事によるとハドロン実験施設では、円形加速器を周回
しながら加速される陽子のうち、実験施設への取り出し口に漏れ出る陽子線を利用。しかし、陽子
の流れをコントロールする電磁石が突然作動しなくなり、施設への陽子の流れが一気に強まったと
いう。このため、陽子を衝突させる標的の金が高温となり、細かな粒子状や別の放射性核種に変換
された。一部が金属製のパイプや遮蔽材を突き抜けて実験室内を汚染した。室内からは、ナトリウム
24(半減期15時間)、ヨウ素123(半減期13時間)、金199(半減期3.1日)などの放射性物質が見つ
かったという。

原子力機構は、おおむね南西方向に1000億ベクレルの放射性物質が放出されたとする推定値を明らか
にした。年間の放出管理目標の100分の1に相当する。職員が23日午後3時半ごろ、実験室内の空気を
サンプル採取し、排気ファンで既に外部へ放出された分も加味し放出量を推計した。

事故当時、施設の南西方向にある三つのモニタリングポストでは平均毎時3ナノグレイの放射性物質
検出されたが、機構は「3ナノグレイは(年間公衆被曝限度の)1ミリシーベルトの30万分の1に相当し、
健康への影響は少ない」としている。

J-PARCの池田裕二郎センター長は県などの立ち入り調査の際、「安心してセンターが稼働できるように
努力する」と述べ、早期の運転再開に意欲を示した。【西川拓、中西拓司】