ペトカウ効果
ペトカウ効果とは、1972年にカナダ原子力公社ホワイトシェル
研究所において、ペトカウ博士が発見したものです。
「液体中にある生物組織に低線量の放射線を長時間照射すると、
高線量の放射線を短時間照射するより細胞膜にはるかに大きな
生物学的障害を発生させる」というものです。
具体的には、水に溶かしたNaCl22(放射性塩化ナトリウム)から
毎分0.01ミリシーベルトを照射したとき、累積で7ミリシーベルト
に達したとき細胞膜が破壊されたことです(しかし、これを毎時
に換算すると、0.6ミリシーベルト=600マイクロシーベルトにな
るので、筆者個人としては低線量とはいえない、と思います)。
どのような仕組みになっているかというと、ペトカウ博士の解説
では、
「酸素が溶け込んだ細胞液の中で、放射線は酸素分子に衝突して
毒性の強い不安定な酸素(活性酸素・フリーラジカル)をつくる。
これらは細胞膜に引き寄せられ、細胞膜を次々に酸化する連鎖反応
を起こし、細胞膜を弱らせ破壊する。」
上の画像でもわかるように、動物の細胞膜はいわば「壁」に当たるもの
ですから、壁が崩れてしまえばその細胞は死んでしまいます。
放射線が、細胞の核の中にある染色体を傷つけることはよく知られてい
ますが、この「ペトカウ効果」はあまり知られていません。そして、な
ぜかICRPも、これについては黙殺しています。