避難計画、実効性に疑問 半島5千人、孤立の恐れ 道路寸断、海路荒天で・伊方町

(08/12 14:13 時事通信配信)

瀬戸内海に突き出た愛媛県佐田岬半島。長さが約40キロあり、「日本一細長い」とされる半島の付け根に、
四国電力伊方原発は位置する。重大事故が起き、大量に放出された放射性物質で付け根に「蓋」がされる形
になった場合、半島に住む約5000人は孤立する恐れがある。道路が寸断されたらどうするのか、荒れた海を
船で逃れることはできるのか。避難計画の実効性に疑問を残し、原発は動きだした。

◇国道は片側1車線
県の避難計画によると、伊方町の住民約1万人は原則として、自家用車や県が手配したバスで避難する。半島
を貫く国道197号を通り、渋滞を緩和するため途中から複数のルートに分散。原発の半径30キロ圏を抜け、松山
市の西隣にある松前町に避難する計画だ。
197号は半島の山あいを通る片側1車線の道路。「本当に大丈夫か」。伊方町中浦の漁師矢野善平さん(67)は
「土砂災害で道が寸断したら大変だ」と不安を抱く。
県砂防課によると、伊方町には豪雨や地震で土砂災害を起こす恐れがある警戒区域が計206カ所あり、うち15カ所
は197号が通っている。矢野さんは「伊方町は危ない所が多い。放射性物質が漏れる前に逃げられるだろうか」と
疑う。

◇港へ細い道
土砂崩れで道路がふさがった場合、計画では半島先端の三崎港などから船で避難する。住民は県内から集まった
フェリーや海上自衛隊の艦船などに乗り、県内のほか海を挟んだ大分県山口県に逃れる。ヘリコプターの活用
も想定している。
ただ、三崎地区で日日用品店を営む池田豊美さん(71)は「いろんなハードルがある」と懸念する。
船で逃げるには、多くの人を港に集める必要がある。だが、中には半島最先端の正野地区のように、細くて狭い
県道をたどって三崎港へ向かう所もある。
池田さんは「港までの道は寸断していないか。乗り物の手配はできるのか。時間帯や天気に関係なく、しっかり
できるか疑問だ」と力説する。
地元フェリー会社によると、冬の三崎港は北西の風の影響で時々、高波が発生する。船が出せないこともあると
いう。地元で暮らしてきた池田さんは「海の避難は不安。同じ地区の人も表立って言わないだけで、みんな思って
いる」と打ち明けた。