原告「核被害隠しだ」 ビキニ国家賠償訴訟の初弁論 高知地裁

(07/01 高知新聞配信)

1954年の米国のビキニ水爆実験を巡って、周辺で操業していた高知県内の漁船の元漁船員ら45人が国を相手に、
被爆線量に関する公文書を2014年まで開示しなかったのは違法だとして、元船員ら1人につき200万円の損害賠償
を求めた訴訟の第1回口頭弁論が7月1日、高知地裁(石丸将利裁判長)で開かれた。国側は争う姿勢を示し、9月
末までに反論書面を出すとした。

核実験のあった海域には、死者の出た第五福竜丸のほか、高知県などの漁船が多く操業していた。福竜丸以外の
船員らに対する被爆線量の追跡調査を行わず、文書も公開してこなかった政府の対応を、司法がどう判断するか
注目される。

弁論で原告側は、ビキニ実験の被害実態を長年調査してきた太平洋核被災支援センター(宿毛市)の山下正寿
事務局長(71)が意見陳述に立った。「閃光が走り、暴風の後、水平線が盛り上がり、キノコ雲が現れた」「船員
たちは白い灰を手でかき集めたりしていた」という高知県の元船員の証言を紹介。この後、全員がひどい下痢になり、
元船員は吐血し肝がんで死亡したと述べた。文書開示までの経緯を「厚生労働省は『ない』と言い続け、米公文書館
で発見され、国会で追及されてやむなく開示した。地球規模の汚染をもたらした水爆実験の被害が第五福竜丸だけで
済むはずがない。日本現代史上まれに見る核被害隠しだ」と強い口調で訴えた。

これに対し、国側は訴えの棄却を求める答弁書を陳述。「事実関係を調査中」とし、9月末までに提出する書面で、
訴状に対する認否や反論内容を明らかにするとした。