1日7千人、闘い続く 作業環境は改善 福島第1、遠い廃炉

(02/27 05:32 時事通信配信)
 
東京電力福島第1原発事故は、3月11日で発生から5年を迎える。敷地内の放射線量は下がり、作業環境は改善したが、
炉心溶融メルトダウン)を起こした1〜3号機は依然高い放射線量に阻まれ作業が難航、増え続ける汚染水との闘い
も終わりが見えない。現場では今も、1日7000人近くが働いている。

22日、福島第1原発に入った。昨年5月に完成した大型休憩所7階から構内を見渡すと、汚染水を保管するタンクがびっ
しりと並んでいた。現在約1100基。タンクを設置できる平地は少なくなった。

土や草木をはぎ取り、モルタルを吹き付けて表面を覆う「フェーシング」が進んでいる。放射線量を下げるだけでなく、
雨水が土に染み込んで地下水になり、建屋に流入して汚染水が増えるのを防ぐ役割がある。樹木は伐採され、タンク群
とフェーシングで構内は灰色に染まったが、作業環境は改善した。

2011年11月、事故後初めて第1原発が公開された時、報道陣は20キロ南のJヴィレッジで防護服に着替え、3キロ手前で
全面マスクを装着した。
今は放射線量が下がり、敷地の9割で全面マスクが不要になった。大型休憩所には食堂もある。定食やカレー、麺類が
各380円。「ワンコイン(500円)で食べ、飲み物を買える値段にした」(東電)。1日2000食が提供される。

正門近くの駐車場に「ゾウさん1号」「シマウマ1号」と書かれたコンクリートポンプ車があった。事故発生当初、長い
アームを伸ばし、冷却機能を失った使用済み燃料プールに水を注ぎ込んだ。危機を救った車両は今も使える状態にある。

免震重要棟で防護服と全面マスクを付け、1〜4号機に向かう。全体の線量が下がったはいえ、原子炉周辺は別。構内でも
線量が高い3号機と2号機の間は、バスの中でさえ毎時420マイクロシーベルト。3号機は水素爆発で大破し、事故の爪痕が
生々しく残る。浸水した4号機原子炉建屋1階は多くの機器が壊れ、錆びていた。バスで海側に移動する。11年の公開時、
3号機の海側で毎時1000マイクロシーベルトを計測した。以前は津波でひっくり返った車が放置されていたが、瓦礫は撤
去された。

護岸の海側遮水壁は昨年10月に完成した。鋼管を打ち込んで壁を造り、汚染された地下水が海に流出するのを防ぐ。
敷地の北に、作業に使った防護服などを焼却する施設もできた。構内には処理を待つコンテナが山積みになっている。
廃炉完了まで40年。膨大な作業が待っている。