ルポ漫画「いちえふ」最新刊発売 フラットに原発作業描く


(10/27 18:25 共同通信配信)

東京電力福島第1原発(通称1F)で作業員として働いた竜田一人さんが体験を基に描いたルポ漫画「いちえふ 福島第一原子力発電所労働記」
の3巻が発売された。フラットな目線を貫き、理解しにくい原発での作業を丁寧に分かりやすく表現している。

3巻では、2014年に従事した、原子炉建屋内で瓦礫を撤去したり、内部調査したりするロボットの運搬・除染などの作業を描いた。「いかに
俺たちが被曝低減に工夫をしていたかがテーマ。年間被曝の上限が決まっているため、作業員の収入はもちろん、確保にも直結する切実な話
です」

より線量の高い場所へ行く必要があると、その場の男たちが「われ先に」と志願する場面が印象的だ。「男って“ええかっこしい”みたいな
ところがありますよね。もちろん線量の上限に迫った人を後ろに残す意味もあります」と解説する。作中には「先の見通しが立たない…」と
いった、紋切り型の表現は見あたらない。「確かに先は見通せないかもしれないが、それでも状況は改善されてきているというのが、現場で
働いている者の実感。マスコミが報じなくても、感じたことを描いてきました」と振り返る。

13年に雑誌「モーニング」に持ち込んだ読み切り作品が新人賞を受賞し、始まった連載も一区切り。「また1Fで仕事ができれば、漫画を描き
たい。福島には知り合いも友だちもいっぱいできた。第二の故郷です」と語る。来年にかけてスペイン、フランス、ドイツ、イタリア、台湾
で現地語版が販売されることも決まった。「いちえふ」第3巻は講談社刊、626円。