核のごみ:再回収可能に…処分計画転換、エネ庁部会報告

(4/30 11:25 毎日新聞配信)

原発から出る高レベル放射性廃棄物の処分方法見直しについて、経済産業省資源エネルギー庁の専門部会(委員長・増田
寛也元総務相)は30日、廃棄物を地中深く処分した後でも、将来世代が再回収し、処理方法を意思決定できることを目指
す中間報告をまとめた。従来の政府方針は高レベル廃棄物の再回収を前提としておらず、国の「核のごみ」の処分計画は
大きく転換することになる。

現行では、原発の使用済み核燃料を再処理する工程で出る高レベル放射性廃棄物をガラスで固め、一定期間冷却した後、
金属容器に入れて地下300メートル以上の深い地層に埋める「地層処分方式」が採用されている。地上と保管場所をつな
ぐ坑道が閉鎖されれば再回収は不可能になる。

中間報告はこの方式について「現時点で最も有望」と評価する一方、「将来世代が最良の処分方法を再選択することが
不可欠だ」と指摘。処分地変更など計画を柔軟にする「可逆性」と、放射性物質の短寿命化など将来の科学技術による
処理を念頭に「回収可能性」の二つの文言を盛り込み、坑道を塞がない方策を提案した。

坑道を残すとテロの脅威などのリスクが増すが、立地地域の変更など処分計画に幅を持たせ、立地受け入れ市町村の負
担感を軽減する狙いを優先した。

処分地選定については、経産省が所管する原子力発電環境整備機構(NUMO)が2002年以降、処分場受け入れ自治体を公
募しているものの、難航している。こうした現状について中間報告は、「国が前面に立って説明責任を果たすことが不
可欠」と指摘。NUMOについては「経営責任があいまいで、『針路なき航海』に陥っていた」と批判する一方、「組織の
ガバナンス(統治)を強化し、目的意識を持った組織に変革すべきだ」とした。

30日の会合では、部会メンバーの伴英幸・原子力資料情報室共同代表が「拙速すぎる」として審議のやり直しを求めた
が、判断については増田氏に一任することで大筋まとまった。

高レベル放射性廃棄物の処分方法をめぐっては、日本学術会議が12年、高レベル廃棄物について「今後数十〜数百年間、
暫定保管すべきだ」との提言をまとめたほか、原子力委員会も同年「可逆性・回収可能性を考慮した段階的アプローチ
の導入」を提唱していた。

処分地が決まらない中、国内の原発などには、約1万7000トンの使用済み核燃料がたまっており、核のごみ処分問題は、
原発を「重要なベースロード電源」と位置付けている政府の足かせになっている。【中西拓司】