原発作業員と「共生」模索 廃炉拠点の福島・広野町〔東日本大震災3年〕

(02/24 16:09 時事通信配信)

原発作業員を町民として迎え入れ、町の活性化につなげる」。東京電力福島第1
原発から南に約30キロに位置する福島県広野町は、事故の影響で住民の帰還が滞る
一方、収束作業に従事する作業員があふれる。廃炉には30年以上かかるとされ、町
は住民と作業員との「共生」を目指し、新たなまちづくりに踏み出した。

原発事故の半年後に旧緊急時避難準備区域の指定が解除されたが、避難先から町に
戻った住民は総人口の4分の1の1352人(2月24日時点)にとどまる。スーパーは廃業
し、飲食店はほとんどが閉まったままだ。

その代わり、頻繁に見掛けるようになったのが作業服姿の男性たち。町の調査では、
町周辺の仮宿舎などで寝起きする原発作業員らは2012年6月の約1000人から、13年10月
には約2500人と大幅に増えた。あるコンビニ店の経営者は「1日の客は震災前より500人
程度増え、売り上げは1.5倍になった」と話す。

町は1月、今年度中にも町北部の2カ所で原発作業員の居住区などの造成に着手し、原発
や除染関連事業者の事務所を誘致する構想を打ち出した。しかし、町役場で開かれた
「復興計画策定協議会」では、住民から「地域経済を活性化させる」との意見の一方、
「子どもたちを外で遊ばせられない」との声も上がり、賛否は分かれた。

原発内では放射能汚染におびえながらの緊迫した作業を強いられ、ストレス解消もまま
ならない。夜には酒に酔った作業員同士のけんかも見られ、いわき市に避難する60代の
男性は「夜は怖くて歩けない」と帰還に二の足を踏む。これに対し、ある男性作業員
(43)は「復興のために廃炉を進めているのに、悪いイメージだけが取り上げられてい
る」と訴える。

町は24時間の防犯パトロール体制を組み、住民の不安解消に乗り出した。総務課の中津
弘文企画グループリーダーは「作業員には、ごみ出しなど地域のルールを順守してもら
う」と受け入れに理解を求める考えだ。