福島第1原発 遠い廃炉 貯水タンク群、拡張の一途

(4/30 6:10 河北新報配信)

福島第1原発の施設規模が原発事故後、拡大し続けている。廃炉作業で大型の関連施設が
次々に新設された。原発をなくす作業のために、かえって施設が肥大化する裏腹な経過
をたどっている。

新設施設は(1)貯水タンク(2)地下貯水槽(3)多核種除去設備(4)貯蔵プールに
代わって使用済み燃料を保管する乾式キャスクの仮保管設備−など。

タンクは放射能汚染水をためる。大きさは主に直径12メートル、高さ11メートル、容量
1000トン。数は940基に上り、配列されたタンク群は構内を覆い尽くす勢いだ。汚染水は
1日400トン排出され、2日半でタンク1基が満杯になる。

そのタンクに代わる貯蔵設備が地下貯水槽だ。最大で縦60メートル、横53メートル、深さ
6メートルの7基が設けられた。だが、4月に水漏れトラブルが相次ぎ、東京電力は使用を
中止。巨大施設が無用の長物になった。東電は使用中止を受け、貯水槽の水をタンクに移す
対策に乗り出した。600基以上のタンクが増設される見通しで、タンク群は拡張を続ける。
 
多核種除去設備は汚染水から放射性物質を取り除く。縦横60メートル、高さ20メートルで
無数のタンクと配管が白い巨大テントに覆われている。乾式キャスクの仮保管設備には設置
場所として縦95メートル、横80メートルのスペースを確保した。

原発敷地は350ヘクタールで、事故前は大半が森林だった。事故後は関連施設の用地を確保
する必要に迫られ、敷地全体の6分の1を超す60ヘクタールの森林を伐採した。

事故を起こした原発廃炉にするために関連施設が増える事態はチェルノブイリ原発でも
見られ、原子炉を閉じ込める巨大なコンクリート製の「石棺」が建設された。石棺の老朽化が
進み、さらに鉄製の巨大ドームで覆っている。

福島市に避難する元原発作業員男性(57)は「汚染水が増えている以上、処理施設の増設は
仕方がないが、増える一方ではいつか限界が来るのではないか。収束どころか施設がどんどん
増えるようでは避難者の帰還が遠のく」と話した。
 
東電は「廃炉作業を迅速、着実に行うために設備を設置している。今後も必要な物を設け、作業
を進める」としている。