解剖から甲状腺癌調査 原発事故の影響有無解明へ 福島医大

(12/31 福島民友新聞配信)

福島医大医学部の法医学講座は本年度から、警察から依頼を受けた「法医解剖」の際、亡くなった人が甲状腺癌を発症して
いたかどうかに関する研究を進めている。

甲状腺癌は一般的に発症しても生存率が高く、別の死因で亡くなった人の遺体から見つかるケースも多い。将来的に同大は、
医療機関の協力を得て県外でも同様の手法で発症頻度を調べて地域ごとに比較、東京電力福島第1原発事故に伴う放射線
甲状腺癌の発症に影響を与えたかを知る手掛かりにする考えだ。

研究では、遺体解剖の一環として甲状腺を摘出し、一定の厚さに切って標本を作り、肉眼や顕微鏡で癌など異常がないか調べ
る。司法解剖など死因究明のために行う「法医解剖」は、県内では福島医大だけで行われている。子どもや大人まで対象が
幅広いため、年間に約200件ある。このうち調査対象は、損傷により調べるのが困難なケースを除く半数以上の遺体。既に
2013(平成25)年以降の約200体について調査を済ませた。従来、法医解剖では全ての臓器を調べている。同講座によると、
体に悪い影響を与えていない甲状腺癌が遺体から見つかることは珍しくない。こうして見つかる甲状腺癌については国内の
医療機関が取り組んだいくつかの先行研究があるが、発症頻度は研究ごとに2〜35%と開きがある。調査手法がそれぞれ異な
ることなどが理由とみられ、今回の研究では、手順を決めた上で精密に調査していく方針だ。