蔵元、新酒造りに入れず 全袋検査で酒米後回し 福島県

(2012-10-27 14:43 時事通信配信)

2012年産米の全袋検査がピークを迎える福島県で、酒造用のコメの検査が滞り、県内の蔵元が新酒の仕込み
に入れない状態が続いている。日本酒の消費量が1年を通じて最も多い忘年会シーズンの新酒発売は難しい状
況だ。東京電力福島第1原発事故による風評被害の払拭を目指す中、蔵元では「何とか年内には発売を間に合
わせたい」と焦りがにじむ。
福島県清酒製造量は全国7位、酒造免許取得者数は同4位と、全国有数の酒どころだ。県内65の製造業者が
加盟する県酒造協同組合によると、仕込みの早い15社前後は例年、9月下旬から作業を始めて、12月には新酒
を販売するという。
食用、酒造用などを合わせた今年の県産新米収穫量見込みは約36万トン(約1200万袋)で、これまでに4割
超の検査を終えた。例年、年内に出荷する新米は全体の3割程度とされることから、県水田畑作課は「検査自
体に遅れはない」と強調する。しかし、県酒造協同組合の阿部淳専務理事は「酒米コシヒカリなどの主力
食用米に比べて(検査が)後回しにされやすい」と指摘する。
こうした状況の中、今年は県産米が蔵元に届くのは早くて今月末となる。酒の製造には2カ月前後かかるた
め、年内の新酒出荷は難しい情勢だ。12月の清酒消費量は、年間の2割近くを占めるため、製造の遅れは経営
を圧迫する懸念がある。
南会津町にある会津酒造は、例年であれば10月半ばに届いていた新米が2週間ほど遅れる見込みで、杜氏たち
は手持ちぶさただ。初搾りの生原酒「凛」は例年12月半ばまでに出荷してきたが、渡部文一社長は「もろみの
発酵次第だが、年の暮れに間に合うかどうか」と不安を隠せない。