(再掲)内部被曝に関して・移行係数とは?

*「移行係数」に関して、再度の解説の要請がありましたので、キノコの移行係数の出典も加え、再掲します。

「移行係数」とは、土壌中の放射性物質がどの程度作物に取り込まれるか、を数字で表したものです。
もちろんこのような研究は、従来の日本国内ではほとんどされてきていませんから、海外の文献から
引用することになります。食習慣も違いますので、コメの移行係数はありませんし、農林水産省が発表
したデータ、しかもセシウム137についてのみなので、参考程度にみておけばよいと思います(何より、
土壌の汚染度がわからないと、移行係数がわかっていても計算のしようがありません。土壌の汚染値
×移行係数になります)。以下作物ごとの移行係数ですが、日本ではほとんど摂取されていないと
思われるものについては省略しました。

ホウレンソウ・・0.00054

カラシナ・・0.039

キャベツ・・0.00092

ハクサイ・・0.0027

レタス・・0.0067

キュウリ・・0.0068

トマト・・0.00070

イチゴ・・0.0015

ソラマメ・・0.012

タマネギ・・0.00043

ネギ・・0.0023

ニンジン・・0.0037

ジャガイモ・・0.011

サツマイモ・・0.033

テンサイ・・0.047

リンゴ・・0.0010

(ここまでは農林水産省の公表しているデータによります http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouan/pdf/110527-01.pdf )


キノコ(ベラルーシにおける主食)・・9.3から15

(キノコの移行係数については、社団法人日本土壌肥料学会のサイトの原発事故関連情報(6)3.キノコへの
Cs-137(筆者注:セシウム137のこと)の移行のページによります。サイトは http://jssspn.jp/info/nuclear/cs-2.html )


*(参考)社団法人日本土壌肥料学会原発事故関連情報(6)3.キノコへのCs-137の移行

3. キノコへのCs-137の移行

チェルノブイリ原子力発電所の事故以降、キノコ中放射性Cs濃度の高いことが数多く報告
されている(例えば、Battistonら, 1989; Bemら, 1990; Kammererら, 1994)。日本にお
いても一般の食品に比べ、キノコ中Cs-137濃度の高いことが知られている(杉山ら, 1993;
Ban-naiら, 1997)。そのためチェルノブイリ事故以降から1990年代において食品摂取に
より人体へ移行するCs-137の約30〜50%がキノコ由来であると推定されている(五十嵐ら,
1989; Ban-naiら, 1997)。また、野生種のキノコ中Cs-137濃度は、人工栽培されたキノコ
より高い濃度にあることが知られている(杉山ら, 1990; Ban-naiら, 1997)。キノコの菌
糸が生育する基質中Cs-137濃度によるが、一般に腐生性キノコに比べ菌根性キノコ中Cs-137
濃度で高い濃度にある。更に、基質中Cs-137濃度が比較的一様であってもキノコ中Cs-137濃
度は種類によって数桁の濃度範囲にあり、キノコ中Cs-137濃度はキノコの種類に依存する
(Kammererら, 1994; Tsukadaら, 1998; Yoshidaら, 1994)。キノコの移行係数(乾燥基質
1 kg当たりの放射能濃度(Bq/kg)に対する乾燥したキノコ1 kg当たりの放射能濃度(Bq/kg
乾物)の比)の平均値は、15(Ecklら, 1986)、9.3(Tsukadaら, 1998)等と報告されている。
また、菌糸が存在する基質毎にキノコの種類を分けて調査したCs-137移行係数は、>10(木質)、
5.5(リター)、13(表層0-5 cm土壌)、11(>5 cm土壌)との報告もある(Yoshidaら, 1994)。